呆れるほど恋してる。
「ねえ!ちょっと、花嫁のドレス見た?ヴィヴィアンよ!順ちゃんったら甘やかしすぎよ!貢ぎすぎ!」
恵比寿。
高台に佇む一軒家レストランで都心とは思えないほど緑豊かな庭つきでその式は行われた。
三山が懐かしの海外ドラマの主人公のウエディングドレスと一緒だと大騒ぎしている。
それを友香が「まあまあ」となだめた。
「でも本当に綺麗でしたね。後でお色直しするのも楽しみ」
「でも結婚ってスタートなんですよね。すれ違いまくってたカップルなのに、上手くいくのかしら」
芽生がテーブルの上に出されたコース料理を頬張りながら言った。
既にボトルが2本空いている。
「あんた、飲み過ぎじゃない?」
菜子があきれ気味に芽生に言った。
「まあ、多めに見てあげて。芽生ちゃんのことは」
三山が芽生の肩に手を置いて庇った。
「失恋した相手の結婚式に出るなんて、勇気あるわよね。あんたも」
傷口に塩を塗るようなやり方で吹っ切れようとする芽生に、友香も菜子も小さく溜息をついて「いい男紹介してあげるから」と彼女を優しく慰めた。
「いいですよ。アラサーのお姉さまよりも出会いはたくさんありますから」
好意にツンとしてそっぽを向く芽生に菜子は「誰よ、こんな子呼んだの」と三山に言う。
「まあまあ。芽生ちゃんはツンデレだから。せりちゃんの店舗の良い口コミを流してくれたのは彼女だしね」
今度は菜子を三山がなだめた。
「そうですよ。あの時インスタで芽生が良い噂流さなかったら、そんなに売れてないですよ。あの人も、あの店も」
「調子に乗るんじゃないわよ」
「ふん」
「……!」
険悪なムードに友香と三山は顔を見合わせて肩をすくめた。