呆れるほど恋してる。
仕事に追われた一週間後。


せりは、友人の秋本菜子(あきもと なこ)と一緒に表参道にあるフィットネスクラブにいた。

スポーツが好きな友人の誘いで、一緒にヨガをやっている。


彼女は高校時代からの付き合いだ。


大学は離れたが、こうやって時間を作っては一緒にいる。


気兼ねなく話もできるし、一緒にいて居心地もいい。


「せりさー。最近痩せた?」


「残業多いからね」


あははと笑って、誤魔化す。


先日の順とのことが頭に残って、食が細くなった何てどうやって説明したらいいのだろうか。


菜子は大学時代から六年も付き合っている彼氏がいる。


一途な彼女に夜遊びの相談をしづらい。


「そういえばさ。今日テレビでやってたんだけど、表参道に三山幸平の店があるじゃん」


彼女の突然の言葉にドキッとする。


「え、あ、うん」

歯切れの悪い返事になってしまった。


あの日の夜を菜子は知っているはずがないのだ。


「今日イベントやってるらしいけど、覗いていく?せり好きだったよね?」


魚のポーズをとりながら、菜子がせりに尋ねる。


「どーしようかな」


イベントに行くと言っても、三山がせりのことを覚えている訳でもないし、順がその場に来ているとも限らない。


「珍しいね。化粧フリークのせりが歯切れが悪いなんて。やっぱ何かあったでしょ?」


笑いながら、菜子は言う。


「ううん。ただ付き合わせちゃうの悪いなって」


「何を今更!そのくらい付き合うよ。私も行ってみたいし」


白い歯を見せて笑う菜子。


気にしすぎなのかもしれない。


せりも笑って「じゃあ、お願い」と彼女に伝えた。


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