呆れるほど恋してる。
時間になって、予約画面を見せた時「あら、友香ちゃんのお友達じゃない」と三山がせりに対して驚いた表情を浮かべた。
「え、せりって三山幸平と知り合いなの?!」
驚いた表情を浮かべたのは菜子だった。
「お久しぶりです。せりです」
「先日はどうも〜。さっきの菜子ちゃんが言ってた化粧フリークの友達ってせりちゃんのことだったのね」
世の中狭いわね。と言いながら、三山はペットボトルの水を飲んで、準備を始める。
店の周りのギャラリーがキャーキャー言いながら、写真を撮っている。
撮っているのはせりではなく、三山なのだが落ち着かない。
「で、今日はどんな風にして欲しいとかあるの?」
「えっと……」
どうしていいか分からず戸惑う。
最近戸惑ってばかりだ。
「おまかせコースでいい?」
あやすように囁かれ、頷く。
「お願いましす」
普段は接客のプロと言われているはずなのに……。
そんな風に落ち込みながら、せりは三山に身体を預け瞳を閉じる。
「せりちゃんは、肌白いわね〜。今日は、ブラウン系でまとめてみようかしら。ピンクルージュとかつけて愛され系メイクにしてみましょう」
何時間も色んな子のメイクをしていたなんておくびにも出さず、三山は楽しそうに言った。
菜子も真剣に三山の手を見ている。
時折、「なるほど」と言いながらスマホでメモを取っている。
「楽しそうですね」
三山に声をかけると、三山は笑いながら「仕事があるって幸せなことなのよ」と言った。
そして先日のパーティーで順が言っていた言葉を思い出す。
三山幸平って一時四畳半の部屋で生活していたらしいよ。
三山が成功したのが少しだけ分かった気がした。
結果が出るほど夢中になったのだ。
きっと今のままで満足していないだろう。
行き詰まる時間もないほど、夢中で走ってきたのだ。
キラキラと瞳を輝かせながら。