呆れるほど恋してる。

「確かに、美人よねえ。モデルになれるようなレベルではないかもしれないとしても、そこそこ美人よ」


三山に言われて、褒められてるのかけなされてるのか分からないが、自分自身のことはよく分かっているつもりなのでポジティブに解釈することにした。


絶世の美女達を見てきた三山だからこそ、そこそこ美人という評価は一般人のせりに対してはまずまずの評価のはずだ。


いやいや。


承認欲求を満たされている場合ではない。


「あの、今度のコラボの件で色々お話を聞かせてくださるって……」


仕事をしなくては。


「せりちゃん」

静かに三山が言葉を発する。


「はい」


真剣な表情で三山はせりを見つめていた。


普段はオネエ言葉でふざけているが、真剣な表情の三山は非常に顔が整っているので、不覚にもドキッとしてしまう。


「あんた、つまんない女ね」


「え?」


「こんなに酔っ払って、まともに話なんかできるわけないじゃない。焦りすぎよ〜」


「焦りすぎ?」


「どうせ、帰り道にマーケティングの本を買ったりして読んだけどうまく自分のものに吸収できなかったパターンね」


まるで監視カメラで見ていたかのように行動をピタリと当てられ、今度は違った意味でドキッとする。


「べ、別に、そんなことないですよ」


「あら、じゃあ鞄の中見せてみなさいよ。きっとカバーのかかったマーケティングの本が出てくるわよ〜」


「絶対カバン開けません!」


「入ってるんだ」


せりの言葉に順が笑った。


「笑わないでくださいよ」


「先輩、昔から真面目だから」


「友香うるさいよ。余計な一言だよ」


談笑していると、少しずつ不安が消え去っていく。


仕事するのは一人じゃない。


大丈夫。


そんな風に思えた。
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