呆れるほど恋してる。
そのあと、また一緒にダラダラして映画を一緒に観た。
流行りものの映画ではなかったけれど、人の心理をよく描いたものでエンドロールが流れた時には、頬には涙が溢れている。
「ティッシュいる?」
「ありがとうございます」
箱ティッシュを差し出され、せりは涙を拭いた。
「泣き虫なんだ」
「泣き虫じゃないですよ」
「そうだね」
笑いながら、順はせりのことを抱きしめた。
首筋に顔を埋められ「かわいいね」と囁かれる。
骨抜きにしてしまうぞというくらい、順はせりを甘やかした。
お昼は、順の行きつけのカフェで食事をし、少しだけ周辺を散歩した後マンションに戻る。
ゆっくりと流れる時の中で、本日の別れが近づいていた。
「せりさん。次いつ会える?」
「次?」
「うん」
「うーん。休みは次の木曜日かな」
「木曜日か。わかった、連絡するよ」
そう言って順がスマートフォンを取り出した時、ピーンポーンとインターフォンがなった。
「……」
「……」
「どうぞ」
「うん」
せりに促され、順はモニターのところへ行く。
「宅急便でーす!」
元気のいい声がした。
「この間頼んでたやつだ。とってくる」
玄関に順が向かう。
それと同時に順のスマートフォンにメッセージが表示された。
見ないようにするというのが女の務め!
と思っていたが、唐突に画面に表示された文字はせりが意識的に目をそらす前に脳に伝達をしてしまったらしい。
『今日のデート楽しみにしてます。 芽生』
ああ、なーんだ。
そういうこと。
そういう奴なのね。
冷静な頭で熱い胸に冷水をかけていく。
関係ない。
せりは、順の人生に口を出せる人間ではない。
恋を深くする前にわかってよかったじゃない。
「せりさん、ごめんね」
荷物を抱えて部屋に入ってきた順に、せりは優しく「そろそろお暇しますね」と言葉をかけた。