呆れるほど恋してる。


一緒に行くよという順を振り切って、せりは歩いて駅まで一人で向かった。


夕方前の少し赤みがかった空の下に、柔らかい風が吹く。


まるで大丈夫だよと自然に包み込まれているようで、少しだけホッとため息をついた。


本気になる前でよかった。


大丈夫、傷ついたりなんかしていない。


「何やってんだ……」


自分自身に呆れてしまう。


勝手に浮かれて舞い上がって。


いい年した女が、まるで大学生のような浮かれ具合で恋に突っ走っている。


SNSでは学生時代の友人たちが幸せそうな結婚報告をしているのに。


自分だけが、社会に出た時から何も変わっていない。


年を重ねた分だけ、イタさが増す。


仕事もそうだ。


選ばれたからと言って、成功できるわけじゃない。


ここから努力できた人間が、たまたま運を持っていた人間が成功していく。


先の見えない巨大な迷路に迷い込んだみたいだ。


学生時代は受験勉強に追われ、社会に出てからは仕事、結婚と背負う荷物が一気に増える。


ハンデが多くなっていって、素早く動こうとすればするほど、その背負う荷物が行く手を邪魔するのだ。


電車に乗って、一駅分過ぎた頃。


なぜか自然と頬に涙が流れた。

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