呆れるほど恋してる。

休憩室を後にすると、店にはたくさんの女性であふれていた。


セリーヌ・ヴィーナスのコンセプトは、大人の女性をより魅力的に見せられるようにということだ。


サイズ展開もS〜Lサイズまで。


どんな体型の女性でも着られるように。


そして、流行を忘れずに。


よくあるのが、可愛いけれどサイズが合わない。


デザインは好きなのに、着られないという切なさ。


試着室で「これ合わないかな……」と出てくるときの、あの苦々しさをなくそう。


そういったビジョンを掲げて出来たブランドだ。


雑誌ともよくタイアップしており、美人辞典、VeVeなど有名雑誌にもよく参加している。


何度かその店の店長して、せりも雑誌に参加させてもらったことがあった。


新しい店長になる女の子は、大型店舗の店長は初めてだそうで一生懸命に働いている。


困っている客には積極的に話しかけ、一人で選びたいんだろうなといった雰囲気を持っている客には静かに見守っている。


人のさばき方も見事だ。


この短期間で、店の女の子の特徴をよく掴んでいる。


店の空気は完全に彼女のものだ。


「お疲れ様です」


水森と名札をつけたその女の子はせりに向かって、笑顔で挨拶をした。


「お疲れ様です。すごいですね」


「いやいや、川村店長の後だからしっかりとやらないと」


首を大きく振って、水森はハキハキと言った。


「そんな私は……」


毎日、三山にダメだしをされている。


自信なんか持てるはずもなかった。


「うちの会社、川村店長に憧れている人多いんですよ。絶対に負けないじゃないですか」


「……」


「だからと言って、別に人を下に見ている訳でもないし。プロジェクトに選ばれた理由、わかります。もっと上に行くべき人ですよ」


「……」


「この店舗に来るの初めてだったんですけど、売れている理由がよくわかりました。女の子達が喜ぶ仕掛けがたくさんあるんですよね。小物とか。働いている私までワクワクします!」


思い切り、頭を殴られたような気持ちになった。


そうだ。


この店を会社から預かった時、売上もそんなになかった。


社内ランキングでも下の方にいた時、お店の女の子達と一緒に自分たちが行きたいお店の案を出し合って、季節ごとにこだわって、勉強して色んなお店に行って……。


だから三山は言ったのだ。


現場の私の意見が聞きたい、と。


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