呆れるほど恋してる。
結局、まきちゃんとはご飯に行かなかった。
早く家に帰って、アイディアをまとめたかったし、このチャンスを逃したくはなかった。
三山に認めてもらいたい。
一緒に対等に仕事ができるチャンスなのに、ここで諦めるのは勿体ない気がした。
明日は休暇だ。
何かできることはないだろうかと考え、実際の店舗ができる周辺に足を運ぼう。
そう決めた。
春に買ったばかりのノートパソコンを片手に、コーヒーを飲んでいると順のことを不意に思い出した。
いやいや、あんな男のことなんか忘れないといけない。
絶対二股の相手なんかになりたくない。
1日に何人もの女とデートする男と一緒にいて、幸せなんかになれないし、幸せにもしようと思えない。
ため息をついて、せりは再び作業に集中しようとしたが、考えれば考えるほど頭の中に順の顔が浮かんでくる。
二股を平然とする男なんて最低なのに、どうしてこんなに心惹かれているのだろう。
優しい彼の手つきを嫌でも鮮明に覚えている。
「……」
スマートフォンを取り出し、最後に送られた LINEを眺めた。
仕事、あんまり無理しないでね。
とだけ気遣った言葉で終了している。
馬鹿にするな。
と憤慨して、約束も断って無視を続けている状況だが本当にそれでいいのだろうか。
思考と気持ちのアンバランスさに戸惑うばかりだ。
何気なくLINEを眺めていたら、せりは間違って電話をかけるボタンを押してしまったことに気がついた。
「あ、やばっ!」
慌てて消すも、履歴は残ってしまう。
電話マークに「キャンセル」という文字が表示され、どうしようか戸惑っていると着信を告げる画面が表示された。