呆れるほど恋してる。
次の日。
いつもよりラフな格好で家を出た。
夜の食事は考えないようにしなくてはと思いながら、あえてパンツ姿にする。
スニーカーはあまりにも露骨だと思い、フラットシューズにしたがこれで高い店は入りづらいだろう。
居酒屋で済ましてさっさと帰ればいいのだ。
財布の中もあえて少なくしていく。
予算が無ければ順だって遠慮してくれるに違いない。
ご馳走なんてしてもらえないと駄々をこねれば、さすがに順も面倒くさい女だと思うだろう。
作戦は完璧だ。
うんうんと頷いて、せりは道を歩く。
電車を乗り継いで原宿駅に到着すると人の波にのまれそうにになった。
若者が入り混じるこの空間で、トレンドは生まれていく。
一軒、一軒どんな店があるのか。
そして、どんな店に女の子達が惹かれ入っていくのか丁寧に観察していく。
時間はあっという間に過ぎていき、昼頃スタートしたにも関わらずあっという間に順との待ち合わせ時間になってしまう。
「……時間が」
足りない。
まだまだ見足りない店がたくさんがある。
でも約束は守らなくてはならない。
悩んでいると、順から着信が入った。
「あの……」
「せりさん?今どこ?」
「今日は」
「キャンセルなしって言ったでしょ」
「……」
「表参道のラルフローレンのところまで歩いてこれる?」
「はい」
柔らかく誘導され、せりは目的の場所まで歩き始めた。
しばらく歩くと、順の姿が見える。
静かに立っている彼の姿を見て、なぜか胸が締め付けられるような感覚に陥った。