呆れるほど恋してる。
「あ、せりさん」
せりのことを見つけると、順は嬉しそうにせりに向かって手を振った。
せりが駆け寄ると「行こうか」と普通に手を取って歩き始める。
「あの……どこに行くんですか?」
「どこでしょう?」
にっこりと笑って順は言わない。
どこか予約取っているのだろうか。
「あの、今日あまりお金持ってきてないので居酒屋とかどうでしょう?」
作戦1だ。
「せりさん居酒屋好きなの?」
キョトンとした表情で順に尋ねられ、せりは頷いた。
「まあ」
積極的に使用はしないが、嫌いではない。
そんな不思議そうな表情をするのをやめてほしいと思う。
「そっか……。でも今夜は居酒屋じゃないんだ。ごめんね」
申し訳なさそうに笑った後、手を引き寄せられて抱きしめられた。
「……」
「ところで、せりさん。今日すごくボーイッシュな格好だね」
改めてせりの格好を見て、順はまるで珍しいものを見るような表情でせりに言った。
彼の表情はくるくる変わる。
「偵察なので」
「あ、なるほどね。いつもスカートだったからパンツ姿も新鮮でいいね」
「……ありがとうございます」
「でも、ドレスコードがあるからあっちにあるセレクトショップで着替えようか」
「え?」
「俺の友達が経営している店だから、インポート物が安く買えるよ」
「はい?」
お金ないって宣言したの忘れてるのかな、この人。
「せりさんは何色が似合うかな」
せりの頭を撫でた後、順は彼女の手を繋ぎ直して歩き始めた。
ドレスコードのあるお店なんて、一体この男は何を考えているんだ。