呆れるほど恋してる。



現像室で写真を現像する。


自分が今までに撮ってきた写真たちを眺める。


自分の仕事。


カメラマン。


成功も何もしていない自分の本当の姿を赤裸々に彼女にさらけ出すのが怖くなった。


毎年たくさんのカメラマンの卵が世の中に排出されて、ひっそりと消えていく。


順の現像室だって、夢を手放した先輩の現像室を借りている状態だ。


厳しい世界の中で必死に食らいついている。


今は仕事があるけれども、いつか消えてなくなってしまうかもしれない。


そうしたら、彼女と一緒にはいられなくなってしまうのではないか。


そんな風に思った。


やってきたチャンスを逃してはいけない。


頭では分かっている。


彼女は待ってると、一緒に行くと言ってくれるのだろうか。


いや、無理だろう。


屈託のない笑顔が自分に向けられるのは、二度とないような気がした。


順は静かに溜息をつく。


仕上がった写真を眺める。


気分が暗いまま現像すると、なんとなくぼんやりとした出来になってしまう。


「……やり直しだ」



納得がいかず、彼は作業をやり直す。



しばらくは彼女のことを忘れなくてはならない。


そんな風に思った。


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