呆れるほど恋してる。
次の日、目が覚めて休日だったことにせりは気が付いた。
なにをしようか。
普段、仕事に追われて生活していて、いざ休暇となると何をしていいのか分からない。
とりあえず、この禿げたネイルをどうにかしないと。
徐行液を棚から取り出し、斑になったピンク色のマニキュアを綺麗に落としていった。
しばらく時間を置いた後、30分かけて爪の形を整えた。
伸びたつめにベースコートを塗る。
まるで雑誌に紹介されているような形になった。
と自画自賛していると、突然携帯の画面が着信を告げる表示に変わった。
丸山友香は大学時代の後輩で、サークルが同じだった子だ。
在籍している頃からモデルをやっていて、今でも時々会っている。
「もしもし?」
「あ、せり先輩?元気ですかー?」
明るい声色で友香は言った。
「元気だけど、友香ちゃんは元気そうだね」
「はいー!最近モデルの仕事も順調なので、毎日が楽しいんです!」
キラキラした表情なんだろうな。とCHANELの559のマニキュアを塗りながら、せりは「よかったね」と言葉を紡いだ。
「ところで、先輩」
「んー?」
「今晩ヒマですか?」
「まあ、ヒマだけど」
唐突の休みを持て余していたところだったので、せりは気のない返事をする。
友香が遊んでくれるのなら、ラッキーだ。
モデル業の仕事の話も聞いて、トレンドの参考にさせてもらおう。
そんなことをぼんやり考えていたら、次の瞬間友香がとんでもないことを口にした。
「先輩、今夜業界のパーティーに参加しません?」