呆れるほど恋してる。



返事が来ないまま、もう二週間がたった。


そろそろ諦めのつく頃だ。


自分の犯したことの重大さを改めで身にしみこませながら、成功しつつある自分の仕事に少しだけ満足する。


ガーリーな高田のデザインとシックな三山の化粧品。


それを合わせるアイディアが、アンティークな世界観だった。


これは順に連れて行ってもらったあのセレクトショップからインスピレーションを得た。


そこからはトントン拍子で、店舗の内装から何から行き詰っていたことがまるで嘘かのように進んだ。


「本当に、この案で大丈夫ですかね?」


タバコを吸っている三山に呟くように声をかける。


「あら、やだ。あんたそんなに適当に考えたものをわざわざ会議で提案したの?」


「いえ……」


「じゃあ、大丈夫よ。悩んで悩んで一生懸命調べて、最善を尽くしたものは私達を裏切らないものよ。努力が認められるのは学生時までって言うけれど、努力もしない人間に栄光は与えられないわ」


「……」


「だから、そんなしけた表情してないで、堂々としてなさいってことよ」


背中をバンっと叩かれて、思わず体勢を崩してしまう。


「ちょっと、三山さん。力入れすぎですって」


「冗談も返せるくらい元気になったところで、もう一仕事手伝ってちょうだいな。もうひとアイディアがほしいのよ」


にやりと笑って言う三山は、慰めなんかではなく仕事のパートナーとして信頼してくれている。


ずっと雑誌の中で見てきた憧れの人。


そんな人が自分を頼ってくれている。


こんなに幸せなことがあるのだろうか。


「ところで、順ちゃんから返信は来た?」


唐突に現実を突きつけられて、動揺したがすぐに気を取り直して首を小さく横に振る。


「私がいけなかったと思うので、諦めました」


「え、なんで?」


「返信来ないんですもん」


口に出して言うと、もう終わってしまったんだなと改めて痛感する。


「そんなことないわ。順ちゃん、あなたのことは本気だったもの」


「でも付き合ってはもらえなかったんです……」


三山に八つ当たりしたって仕方がない。


「でも……」


「三山さん、仕事に戻りましょう」


ニッコリ笑ってはぐらかす。


せっかく一生懸命仕事をしている最中に、尊敬する人に気持ちをぶつけて嫌な思いをさせるのは嫌だった。


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