呆れるほど恋してる。
「え?パーティ?」
「はい。三山幸平(みやま こうへい)ってメイクアップアーティストって知ってます?」
友香の口から出てきたのは、まさにせりが今雑誌を開いているページに出てきている男性の名前だ。
知ってるも何も今を時めく旬の人だ。
彼が紹介したものは即日完売。「三山売れ」という言葉があるほど、テレビにも引っ張りだこの人を知らない訳がない。
確かに友香。最近雑誌にもよく出ていた気がする。
そんな人脈があったとは……。
「ってかさ。一般の私が参加していいの?そんなすごい人たちのパーティーに」
「え、だって先輩好きじゃないですか。こういうの。自分のスキルアップのために勉強していらっしゃいますし、そういう人にこそチャンスは与えられるべきだと思ってるんです。私」
あっけらかんと言う友香に、せりは噴き出した。
友香はそういう子だ。
キャピキャピした関係を望まない。
大学時代も読者モデルの女の子たちがモデルをやっている友香と繋がろうと近寄ってきた時も「向上心のない奴とは一緒にいたくない」と突き放していた。
何故、自分が気に入られていたのか分からないが、友香からしたらせりを連れて行きたい理由があったのだろう。
「ありがとう。参加させてもらうね」
断る理由は1つもないので、せりは有り難く参加させてもらうことにした。
「よかったですー。今夜、家まで迎えに行きますね!じゃあ、撮影残ってるんで!」
電話が切れた後、気が付く。
何を着て行こう。