呆れるほど恋してる。
仕事が終わると、突然知った顔達が姿を現した。
人気のない店舗のなかで、せりは驚き悲鳴に近い声をあげる。
「え、なんで?」
そこに立っていたのは、菜子と友香だった。
「先輩!ハッピーバースデー!」
クラッカーを鳴らし、店舗の中に紙吹雪が舞う。
「サプライズだよ!27歳の誕生日おめでとうー!」
「えー!」
まさかのサプライズに、涙が溢れた。
一人ぼっちで過ごすと思っていたので、友人たちの存在は非常にありがたかった。
「店も予約してありますから、行きましょう!芸能人御用達の一見さんお断りの店ですよ!」
胸を張って友香は言った。
相当自信があるらしい。
「でも、菜子と友香はいつ仲良くなったの?」
せりの質問に、菜子は「三山さんしかいないでしょ」と笑った。
「三山さん、今日大阪にいるらしいんで、来れなかったんですよね」
誘ったんですけど。
と言いながら、外に待たせているタクシーに「もう少しだけ時間ください」と友香が伝えている。
「せり、もう出れる?」
菜子にせかされて、せりは慌てて店の鍵を取り出した。
「出れる、出れる。もう帰ろうと思ってたし」
友人2人に囲まれて、彼女は店を後にした。
タクシーが小雨の中走り去った後、一人の男が彼女に会いに来ていたとも知らずに。