呆れるほど恋してる。
次の日も容赦なく朝から仕事だった。
本社でセリーヌ・ヴィーナスの新店舗の雑誌取材を受けて、特集を組んでもらえるように打ち合わせを実施する。
「三山さんとコラボなんて、さすが大手としか言いようがないですよね」
省洋(しょうよう)出版社の雑誌 美人辞典の編集長をしている、太田 礼子(おおた れいこ)が飲みかけのコーヒーに手を添えながら感心したように言った。
「今回は本当に川村のおかげというか、なぜか三山さんと話すきっかけがあったらしくて、向こうからチャンスを持ってきてくださったんですよ」
広報担当の人がせりを指さして、言った。
「いえいえ、たまたまですよ」
「えー、でもこちらでもよくメイク特集で三山さんと一緒にお仕事させていただきますけど、なかなか厳しいお方だから一緒に仕事したいだなんて、川村さん相当やり手ですよ」
礼子が興味深々といった表情を浮かべる。
「川村は何気にうちの会社の売上トップですからね。彼女に店を任せたら必ず売上アップに繋がるってくらい、社は彼女に期待してるんですよ」
どこまでよいしょすればいいんだろうというくらい、持ち上げれて流石に「いえいえ、皆さまのおかげです」としか言いようがない。
「働く女シリーズっていうのを今うちの雑誌で連載やってるんですよ。知ってます?」
礼子の言葉にせりは「知ってます」とすぐに反応した。
いつもその特集を読みながら、自分を奮い立たせている。
それを話すと礼子はニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべながら「来月出てみない?」と言った。
「え……」
「川村さん美人だし、セリーヌ・ヴィーナスって爆発的に売れてるけど人ってあんまり出てこないじゃない。ひと昔前の渋谷109のようなカリスマ店員みたいなの流行で作れたら面白そうよね」