呆れるほど恋してる。


雑誌の打ち合わせも終わり、礼子と連絡先交換をして御礼のメールを送った後はもうくたくただった。


だが、店の進捗も気になってせりは新店舗に足を運ぶ。


そこには残業している健がいた。


なぜか少しだけホッとしたような気持になって、近くにある自販機で缶コーヒーを一つ買う。


せりがどうしてもそこは拘って欲しいとお願いした箇所の修正をしてくれている。


健の仕事は信頼が出来た。


「コーヒー飲みますか?」


自販機で買った缶コーヒーを手渡してせりは言う。


「ありがとう。優しいねー」


「お疲れでしょうから。私が修正をお願いしましたし」


「まあね。でもそのくら拘る人の方が信頼できる」


作業を続けながら健は言った。


「手伝います?」


「いや、もう終わるけど。終わった後一緒に飯でも行かない?」


「え?」


「川村さんの顔見てたら腹が減った」


「どういうことですか?」


笑い声をあげると「了承ということで、中華に行きましょう」と健も笑いながら話を進める。


「幸田さんって中華好きなんですか?」


「いや、そういう気分なだけ。しかもこの後家に帰って飯作るだけの元気はないよね」


健の言葉に「その気持ちわかります」と同調し、せりは一緒に食事を取ることを決めた。


「酒飲める?」


「飲めますよ」


後20分作業させて、と彼は作業を再開させた。


せりも少しだけ手伝ったが、彼は嫌がらなかった。



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