呆れるほど恋してる。



分かった。待ってるね。としか選ぶ言葉が見つからない。


せりだって三山との仕事がある。


礼子が新しい夢を与えてくれた。


やっと見つけたやりがいのある仕事。


せりだって捨てたくない。


全てを捨てて、彼について行くという選択肢はどう頑張っても見つからなかった。


「私も順さんが好き。でも今の仕事はあきらめたくない」


涙目で答える。


嫌だ。


どうして連れて行ってと言えないのだろう。


一生後悔するなんて分かっているのに。


こんなに好きになる人なんてこの先出てこないのに。


今言わないとこの人を失ってしまうのに。


「言うと思った」


小さく順は呟いた。


「ごめんなさい」


「そんなせりさんが好きなんだけど」


微笑んで順は言う。


キスをされた。


優しくて慈しむようなキス。


忘れられなくなってしまう。


どうしてこんなに好きになってしまったのだろう。


自分でも呆れてしまうほど、順が好きだ。


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