呆れるほど恋してる。
「せりさん」
「なに」
もうだめだ。
涙が溢れた。
「戻ってきたら、結婚してくれる?」
「付き合ってすらいないのに?」
泣いているせりの涙を順は袖で拭う。
きっと高い洋服なのに、躊躇もなく彼は彼女の涙を拭って額にキスをする。
「うん。きっと、俺せりさん以外駄目なんだと思う」
「バカ……」
「バカだよ。指輪のサイズ教えておいてね」
顔を見合わせて笑う。
大丈夫。
今度は信じてみよう。
飛行機にのって十時間も経てば到着する距離。
大丈夫戻ってくる。
寂しくなんかない。
彼に身体を預けながら、ベッドの中で溢れるほどのキスをする。
彼の唇がせりの首筋から胸元へ降りていく。
優しく手が彼女の手を包み込む。
「好きだよ。せりさん」
「私も……私も好き」
「その顔やばい。ぐっとくる」
「いつもそれじゃん」
強く抱きしめられて、再びキスをする。
電気を消すと、部屋の窓から東京の街並みが輝いている。
静かな二人だけの世界の中で、何度も「好きだよ」という言葉かせりの耳に届いた。
離れる最後の夜は、今までで一番深く繋がれた。
そんな気がした。