呆れるほど恋してる。
「次はそろそろ写真撮影かしら」
そう礼子が言った瞬間「メイクは私がやった方が話題になるでしょ」と三山が姿を現した。
「え?三山さん?」
「驚き過ぎよ。せりちゃん。昨日も会社で会ったじゃない」
ケラケラと笑いながら三山がせりに言った。
「こんな有名なメイクアップアーティストとしょっちゅう顔を合わせるアパレル店員も全国の中では川村さんくらいね。それかこのメイクアップアーティストさんが、仕事がなくて暇か」
礼子の意地悪い言い方に「失礼ね」と三山は口を尖らせる。
「せりちゃんは特別なのよ」
「おっと!熱愛!」
からかうような口調で礼子は笑う。
本気ではないのは彼女の表情から分かった。
本当に思っていたらそんなことは言わない。
古くから知っている顔だからこそ出来ること。
「全く、性格の悪さは変わらないわね」
「お互い様でしょ」
軽口を叩き合いながら、二人が語っているのをせりは眺めていた。
「でも、これで順君がフランスに行ってなかったからいい写真が出来たのになと思うわ」
何気なく礼子は言ったつもりなのだろう。
しかし、せりの張っていた気を崩すには充分な言葉だった。