クールな公爵様のゆゆしき恋情
「ようやく笑ったな!」

「あ……」

アレク様とお話していたら、いつの間にか涙が引っ込んでいました。

そう言えばいつもそうです。私が泣いているとアレク様が来ていろんなお話をしてくれます。

私はその度に怒ったり、泣いたりで、その時は寂しい気持ちを忘れているのです。

アレク様はきっと人を楽しくさせる天才なのですね。

そう言うとアレク様の耳が赤くなりました。どうしたのかと思っていると、アレク様はちょっと怒ったような顔をして言いました。

「天才かは分からないけど、ラウラが寂しい時は俺が側に居てやるよ。だからもう泣くなよ?」

「え? アレク様が?」

本当にアレク様が一緒に居てくれたら寂しくありません。

「そうだ。約束するぞ。絶対に一人で寂しくなんてさせない。だからラウラは一人で泣いちゃだめだぞ? ラウラも約束だからな」

「本当に一緒に居てくれるの? ずっと?」

「ああ、ずっとだぞ」

「嬉しい……アレク様ありがとう!」

嬉しくて思わずアレク様に抱きつきました。アレク様は私が重かったのか、コテンと後ろに倒れてしまいます。

草の上に二人一緒に倒れて、私達は声を上げて笑いました。

もう寂しくありません。悲しい気持ちもどこかに行ってしまいました。


「そろそろ帰るぞ。もう遅い時間だから屋敷のみんなが心配してる」

先に立ち上がったアレク様が、転んだままの私に腕を伸ばして引っ張り、立たせてくれました。

すっかり暗くなった道を手を繋ぎながら歩きます。

アレク様の手は温かくてなんだかホッとします。夜の道も少しも恐く有りません。


しばらくするとお屋敷が見えてきました。
お屋敷の周りには灯りを持った沢山の大人が出て来ていて、私とアレク様を見つけると駆け寄って来ました。

遅くまで帰らない私を探してくれていたそうです。

勝手にお屋敷を抜け出して、日が落ちる前の時間に帰らなかった事を私は沢山怒られました。なぜかアレク様も一緒でした。


二人並んで怒られてる時にこっそり隣を見ると、アレク様が悪戯っ子みたいに笑いかけて来ました。

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