クールな公爵様のゆゆしき恋情

過去と手紙

アレクセイ様の腕から解放された後、私は逃げる様に自分の部屋に戻りました。

きちんとお話をしなくてはいけない事は分かっているのですが、自分の気持ちすらあやふやだった為、落ち着く時間が欲しかったのです。

寝室に閉じこもり一人になると、つい先ほどの出来事が鮮烈に蘇って来ます。

息が苦しくなる位、強い腕の感覚。何度も重ねられた熱い唇。思い出すと顔が熱くなって、あまりに居たたまれない気持ちになります。


再会したアレクセイ様は確かに私との結婚を決意しておられました。だからと言ってあんなに強引な事をするなんて、信じられませんでした。ですが一番信じられないのは、その行為を受け入れてしまった自分自身なのです。

決死の覚悟もアレクセイ様のキス一つで崩れてしまうなんて、自分の意志の弱さが情けなくて仕方有りません。



長い間ベッドに突っ伏していた私は、部屋に夕日が入り込む頃、のそりと身体を起こし、ベッドから降りました。

迷いは晴れませんが、これから先の事を考えなくてはならないからです。

私は窓際の机に向かい、引き出しから一通の手紙を取り出しました。

特長の無い白い封筒は、何度も開き読み返した為、すっかりくたびれてしまっています。

その封筒を私は久しぶりに開きました。
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