クールな公爵様のゆゆしき恋情
「ラウラはフェルザー公爵との婚約を拒否するのか?」

「……私の気持ちだけで拒否出来ないのは分かっています。ですが納得は出来ません。アレクセイ様とは一度別れる決心をしたのです。それなのにまた婚約だと言われても、混乱してしまいます」

私の言葉に、今度はお父様が深く頷きました。

「第二王子の頃のアレクセイ様との婚約解消の理由について、ラウラは相手から疎まれているからこのままでは幸せになれない。王都での暮らしにも馴染めないからアンテスに戻りたいと言っていたな」

「はい」

「あの頃のお前は私から見ても何時も思いつめた顔をしていたな。アンテスに戻る事で気持ちが楽になるならと、婚約解消もアンテスでの自由な暮らしも許したが、いつまでもこのままではいられない事はラウラも分かっているだろう?」

「私は……湖の家でずっと暮らしたいと思っていました。その為に働こうとも考えていました」

「ああ、それは聞いている。お前の刺繍の腕はなかなか見事な様だな。だが城を出てもお前が私の娘である事実は変わらない。いつ誰に狙われるかも分からない存在で、立場上強い庇護が無くては暮らしていけないんだ。花を育てるのも刺繍をするのもこれからもすればいいが、それはフェルザーの領地に行っても出来るだろう?」

「自分の立場は分かっているつもりです。でも……お父様はもう私を守ってはくれないのですか? だから私はアンテスに居てはいけないのですか?」

「そんな事はない。お前は幾つになっても私の大切な娘だよ。だが私も何時までも守ってあげられる訳ではないから先の事を考えると心配なのだよ。レオンハルトにはエステルがいる。お前にも人生を共に歩く相手を見つけて幸せになって欲しいんだよ」

お父様の声が優しいからでしょうか。私は子供の様に泣きたい気持ちになりました。

「お父様。私にはアレクセイ様と結婚して幸せになる自信がありません。アレクセイ様に拒否されていた頃の辛さが忘れられないのです。心を開けないのです」

「ラウラが不安に思う気持ちは理解出来る。だが私はフェルザー公爵ならラウラを幸せに出来ると思っているんだ」

「……どうしてですか?」



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