クールな公爵様のゆゆしき恋情
「政略上、フェルザー公爵と当家との縁を必要としているのは確かだが、私はそれだけでお前の結婚を決めた訳では無いんだよ。フェルザー公爵と何度か話し合った結果、お前の夫に相応しい人物だと思ったから決めたんだ」

「……」

お父様はもう心を決めている様でした。アレクセイ様と私の結婚を考えなすつもりは無いのです。

説得は通じないと感じた私は、唇を噛んで俯きました。

「ラウラ。フェルザー公爵とは話しているのか?」

「え?……はい。お話はしてはいます。アンテスに来てからのアレクセイ様は私に歩み寄る姿勢を見せてくれていますから」

そう答えましたが、お父様は首を横に振りました。

「そうではない。お前の気持ちを話したのか聞いているんだ。今、私に言ったような不安な気持ちを伝えたのか?」

「いえ……私の気持ちについては話していません」

それは私の心の深い所までアレクセイ様に見せる事になるのです。
全てさらけ出してしまい、望む答えを貰えなかったら……私はアレクセイ様と向き合うのが怖いのです。


「過去の事も含め、お前が迷っている事や苦しく感じている事を伝え、話し合うべきではないのか?」

「でも……」

「お前は全てを知っている訳ではない。フェルザー公爵の態度に疑問を感じるのは無理無い事だとは思うが、彼にもお前に話せていない事情が有るはずだ。一度しっかりと話し合ってみろ。それでも無理ならば婚約の事は考え直してもいい」

「えっ……」

思いがけない言葉に、私は驚き俯いていた顔を上げました。ですが次のお父様の言葉で私はもっと大きな驚きに襲われたのです。

「お前が辞退するのなら、グレーテをフェルザー公爵の婚約者とする」

「お父様⁉︎ そんな……グレーテはまだ幼くて結婚なんて……」

「幼いと言ってもフェルザー公爵との年の差は九つだから釣り合いが取れない程ではない。今は婚約だけ交わしてグレーテが16歳になってから結婚をすればいい。貴族社会では珍しい事ではないだろう」

「ですが……そんな……」

呆然とする私にお父様は、労わる様な瞳で言いました。

「全てはお前の気持ち次第だ。フェルザー公爵としっかり話し合い考えなさい」


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