クールな公爵様のゆゆしき恋情
「あれは!」

アレクセイ様は声を高くした後、がっくりと項垂れた様子で言いました。

「あの時言った事は本心じゃない……イライラしていてラウラに八つ当たりをしてしまったんだ」

イライラしていた? 
そうでしょうか……あの夜会の時の事は、今でもよく覚えています。

アレクセイ様は大広間の一角で令嬢方に囲われ楽しそうにしていました。笑顔もありました。
機嫌が悪くなったのは私に気付いた後でした。

「八つ当たりではなく、私に対してイライラしていたのではないのですか? 私の何かが気に障ったのだと思っていました」

「そうじゃない。ラウラは何も悪くない……俺自身の問題なんだ」

アレクセイ様は独り言の様に呟いてから、私を真っ直ぐ見つめて言いました。

「昔も今もデリア嬢に対して特別な感情は無い。王都では酷い態度を取り続けていたけれど、ラウラ以外と結婚するなんて考えてた事は一度も無かった。信じて貰えないかもしれないが、本当の事だ」

「……それなら、どうして私にだけあんなに冷たかったのですか?」

アレクセイ様の態度は、誰の目から見ても婚約者に対するものでは有りませんでした。本当に私を妻に迎える気持ちで居たのなら、アレクセイ様の態度はあまりに不可解です。
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