クールな公爵様のゆゆしき恋情

親友との旅

東の空からの太陽の光を受けて、白亜のベルハイムのお城が輝いています。

この景色も見納めかと思うと少しだけ寂しくなりました。

王都での暮らしには最後まで馴染めなかったと思っていましたが、三年住んでいただけの愛着は持っていた様です。


屋敷の玄関前には、アンテス家の紋章が付いた大きな馬車が用意されていました。馬車の近くには屈強な騎士達が控えています。
彼等はアンテス家の上級騎士で、道中の護衛にとお兄様が領地から寄越してくれた人達です。

少し離れた所には一回り小さな馬車と、荷物を運ぶ為の馬車が見えます。こちらにも護衛の騎士達が付いています。

領地に帰るだけで随分と物々しいお支度に見えますが、これにはちゃんと理由があるのです。


「晴れて良かったわね。出発の日が雨じゃ気分が沈んでしまうもの」

私の隣で、青い空を見上げながら朗らかな声を上げたのは、ベルハイムの第二王女のエステル姫。アレクセイ様の異母妹でお兄様の婚約者です。そして私の大切な親友でもあります。

元々このお支度はエステルがお兄様に会いにベルハイムへ行く為のもので、私はそれに便乗させて頂くのです。

お兄様はエステルを心配して充分な護衛騎士を寄越したのでしょう。
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