クールな公爵様のゆゆしき恋情
私は、貴族令嬢としては珍しくあまり人前で踊った経験が有りません。

ですが、二曲目が穏やかなワルツだった事と、アレクセイ様のリードが素晴らしい事から、慌てる事なくステップを踏む事が出来ました。

広間の中央で、アレクセイ様とクルリと円を描く様に踊ります。

アレクセイ様の手は私の腰に添えられ、離れると直ぐに引き寄せて来ます。

私達の身体はぴったりと密着していて、いつもの私ならば、恥ずかしくて逃げ出していたと思います。

ですが、今の私は他人の目など気にならない位、この瞬間に喜びを感じていました。

アレクセイ様とこうやって踊りたいと、ずっと願っていたのです。アレクセイ様と踊る事の出来る他の令嬢方が、羨ましくて仕方がなかったのです。

とても苦しい想いをしたけれど、今のアレクセイ様は私だけの手をとってくれます。
優しい目で見つめて、支えてくれています。


私には難しく感じるステップを余裕で踏みながら、アレクセイ様が言いました。

「ずっとこうしていたいな」
「えっ?」
「許されるなら、このままラウラの側にいたい」

アレクセイ様の瞳は熱っぽく、 私の心を乱したす。

「……あっ!」

動揺したせいでしょうか。ステップを間違え体制を崩した私は、思わず小さな声を上げてしまいました。けれどアレクセイ様が直ぐに支えてくれた為、周りには気付かれずに済みました。

「ありがとうございます」
「俺がラウラを助けるのは当たり前だろ?」

甘く囁かれると、私は胸が高鳴るのを止める事が出来なくなります。

「ラウラ、顔が赤くなってる」

アレクセイ様がクスリと笑いながら言います。

「だって……アレクセイ様のせいです」

恥ずかしくなる様な事ばかり言うからです。

アレクセイ様を見上げて少し睨んでみましたが効果は無かった様で、逆に身体を引き寄せられてしまい、私は更に顔を赤くしました。

夢中な時の時間の流れは早くて、気付けばワルツが終わってしまいました。

寂しく思っていると、アレクセイ様が私の手を掴みます。

「もう一曲踊ろう」

私に断る理由は有りませんでした。だって私自身がアレクセイ様ともっと踊りたいと思っているのですから。

「はい」

アレクセイ様が、とても嬉しそうに微笑みました。



それから二曲続けてアレクセイ様と踊りました。
それは昔を取り戻す様な、幸せで満ち足りた時間でした。
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