クールな公爵様のゆゆしき恋情

聞きたくなかった事実

アレクセイ様と三曲続けて踊った後、私達は軽食や飲み物が用意されている別室に移りました。

私が奥の席に居るエステルを見つけた時、アレクセイ様が声をかけられました。

「失礼致します。アレクセイ王子殿下、ご挨拶をさせて頂きたく、参りました」

あくまで低姿勢で声をかけて来たのは、アンテス領とフェルザー領に接する小さな土地の領主アメルダ男爵でした。

アメルダ男爵はふくよかな身体つきの為か、とても貫禄が有ります。ですが実際はお父様より少し年下で、お子様の年齢も私よりも下だと聞いています。

「先日ご相談させて頂いた件は、如何でしょうか?」

アメルダ男爵の口ぶりから、アレクセイ様との面識がある様です。

ですがアレクセイ様は、不機嫌そうに顔を顰めて言いました。

「今夜はレオンとエステルの結婚祝いだ。無粋な話はするべきではない」

無粋な話? 何の事でしょうか?

分かりませんが、アメルダ男爵はアレクセイ様の言う“無粋な話を”したかった様で、その顔に焦燥感を浮かべました。

それでもアレクセイ様に釘を刺されている以上、口にする事は出来ない様で、私の方に視線を向けて来ました。

「ラウラ様。レオンハルト様のご結婚おめでとうございます」

「アメルダ男爵。本日は兄と義姉の結婚祝いにお運び頂きありがとうございます」

何だかあまり心が篭っていない気がしましたが、お兄様の家族として、丁寧にお礼をしました。

そうしている間もアルメダ男爵の関心はアレクセイ様にあるようです。しきりにアレクセイ様に、何か言いたそうな視線を送って来ます。


「ラウラ、行こう」

アレクセイ様に促され、アメルダ男爵から離れようとすると、焦った様な声に呼び止められました。

「ラウラ様お待ちください!」

「……何でしょうか?」

「アレクセイ王子殿下とのご結婚が決まったと言うのは、本当でしょうか?」

「え……」

「ラウラ様はアレクセイ王子殿下と別れ、アンテスに戻ったと聞いていたのですが……」

直ぐに答えられませんでした。

そう言えば、対外的には私達の関係ば、どの様に伝えられているのでしょうか?
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