クールな公爵様のゆゆしき恋情
結局、何も変わっていなかったのです。
アレクセイ様が優しくなったのは、見せかけだけ。
私を愛してくれている様に振る舞いながら、その実は後悔していたのです。


アレクセイ様の気持ちが私に向く訳が無いと、分かっていたはずでした。

再会してから何度も自分自身を戒めました。

同じ失敗は繰り返さないと心に言い聞かせていたのに……私は自分自身にも負けてしまいました。

アレクセイ様に惹かれる気持ちを止められなくて、結局裏切られ、泣く事も出来ない程に傷付いているのです。


しばらく壁の花の状態になっていると、私を見つけたお母様が近付いて来ました。

「ラウラ? こんな所で何をしているの? アレクセイ様はどちらなの?」

「お母様……」

「あら? あなた顔色が酷いわよ。大丈夫なの?」

お母様が眉を顰めて言います。
先程から胸がムカムカして気分が悪いので、お母様のおっしゃる事は大袈裟では無いのでしょう。

「少し気分が悪くて……申し訳ないのですが、部屋に退がって休んでもいいでしょうか?」

「それは大丈夫だけど、どこか具合が悪いの?」

「いえ……お酒を飲み過ぎてしまったみたいです」

「もう、仕方ないわね。部屋でゆっくり休みなさい。後の事は私に任せておけば大丈夫だから」

お母様に背中を押される様にして、私は部屋に戻りました。
エスコートをして下さったアレクセイ様に何も言わずに戻って来てしまいましたが、構わないですよね。

アレクセイ様は私の事なんて本心ではどうでも良いのですから。
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