クールな公爵様のゆゆしき恋情
遠目で見た通り、花壇はお屋敷の皆が丁寧に世話をしてくれていた様で、どこも変わりは有りませんでした。

色鮮やかな花達が健やかに育っています。

ゆっくりと花壇を見て周り、それが終ると湖に向かいました。

まだ殺風景な湖へと続く道。いつかはここも綺麗な花を咲かせたいと思っていたのですけれど。

湖の畔に辿り着くと、私は適当な木陰に腰を下ろしました。

太い木の幹にもたれぼんやりと湖を眺めます。


とても静かな時間が流れて行きます。湖面を風が渡り、木々がサワサワと揺れる音がします。

私は胸に燻っている憂鬱を吐き出す様に、大きく溜息を吐きました。

こんなに穏やかな場所に居ても、どうしても心が晴れないのです。

アレクセイ様とのこれからを考えると不安が込み上げて来て、苦しくなります。


アレクセイ様の本音を聞いてしまった今、無かった事にして結婚するなんて出来ません。

ですが私が断れば、グレーテがアレクセイ様の婚約者になってしまいます。

私にはどちらも辛い事です。

アレクセイ様と結婚をして愛の無い夫婦となるか、グレーテを妻にしたアレクセイ様とこの先も家族として付き合って行くのか。

道は二つしかないと分かっているのに、私には選べないのです。

本音を言えば、アレクセイ様の妻の座も、愛情も諦めたくないのです。

ですがそれは叶いません。

私はどうすればいいのでしょうか。
おばあ様がいらっしゃったら答えを教えてくれたでしょうか。

いえ、それは無理ですね。私の心を決められるのは、私だけなのですから。
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