クールな公爵様のゆゆしき恋情
どれくらい考え込んでいたのでしょうか。

太陽は真上を通り過ぎ、西の霊峰に近付いています。


散々悩んだ末に、私は心を決めました。


アレクセイ様との婚約は辞退します。やはりどう考えても私への愛情の無いアレクセイ様と夫婦になる事は出来ません。

政略結婚が貴族の娘としての義務だと分かっていても、アレクセイ様だけには気持ちを割り切る事が出来ないのです。

今日、お父様に私の決意を報告してアレクセイ様とは別れます。

でも、その前に、最後に私の気持ちをアレクセイ様に伝えたいと思います。

私がどれだけ苦しい思いをしたのか。悲しい気持ちになったのか。アレクセイ様の事をどれだけ好きなのか。

全て伝えて私の気持ちを分かって貰いたいのです。

もしアレクセイ様に少しでも私の心が伝われば、グレーテと婚約した後、私の事は放って置いてくれる優しさを持ってくれるかもしれないからです。

おばあ様ががリュシオンに言った言葉。
“人の心を開くには、まずは自分の心を見せなくてはいけません”
信じてみたいと思います。どうか、アレクセイ様に私の心が伝わりますようにと願って。


そろそろお屋敷に戻ろうと考えていた時です。

「ラウラ!」

大きな声で名前を呼ばれ、私はビクリと身体を震わせました。

アレクセイ様です。振り返らなくても声で誰だか分かります。

どうしてアレクセイ様がここに来るのでしょうか?

身動き出来ないでいる間に、アレクセイ様は駆け寄って来ました。
< 141 / 196 >

この作品をシェア

pagetop