クールな公爵様のゆゆしき恋情
「ラウラ、どうしたんだ? 急に城を出たと聞いて心配した。昨日もいつの間にか部屋に戻っていたし、何が有ったんだ?」

アレクセイ様が珍しく息を切らしています。まるで本当に私を心配して駆けつけてくれたかの様に。

私はゆっくりと立ち上がり、アレクセイ様とは視線を合わさないで俯いたまま言いました。

「一人になって考えたかったのです」

「一人で?……どういう事だ?」

アレクセイ様の声が固くなった事に気付き、私は視線を上げました。

アレクセイ様の視線は私の首元に有りました。ネックレスを見ているのだと直ぐに気づきました。

「アレクセイ様。このルビーのネックレスはおばあさまの形見なのです。不安な時、お守り代わりに着けています」

私の言葉にアレクセイ様は軽く目を開き、それから気まずそうな表情になりました。

「そうか……だからあの時も着けていたのか」

「はい。アレクセイ様と婚約解消した日も、フェルザー公爵との対面の時も。不安で逃げ出したくなる気持ちを奮い立たせる為に着けていました。そして今も……」

「今も?」

私の只ならぬ雰囲気に何かを感じとったのでしょうか? アレクセイ様の顔が強張ります。
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