クールな公爵様のゆゆしき恋情
「幼い頃、王都で初めて会った時から私はアレクセイ様だけを想っていました。どんなに冷たくされても、遠く離れてもその気持ちだけは消えなかった……今でもです。私は別れを告げているこの瞬間もアレクセイ様を想っています」

アレクセイ様が、俯いていた顔を上げて驚愕の表情で私を見つめました。

「……だからアレクセイ様とだけは政略結婚は出来ないのです。側に居たらアレクセイ様の気持ちを求めてしまいます。アレクセイ様が他の女性を想っている事が耐えられないのです。私は形ばかりの妻にはなれないのです」

私だけを見て欲しい。触れるのは私だけにして欲しい。
アレクセイ様を誰にも渡したくないのです。
誰かと共有するなんて、私には出来ないのです。

言葉にしたからでしょうか。
枯れてしまったと思っていた涙が、溢れて来ました。胸が痛くて苦しいです。

「アレクセイ様が好きです。幼い頃からずっと……きっとこの気持ちはこの先も変わらない。忘れられないんです。だから苦しくて仕方ないんです、だからどうか私を解放し下さい……お願いです」

ポロポロと涙が溢れて行きます。もうアレクセイ様の顔を見ている事が出来なくて、私は顔を手で覆い俯きました。

その瞬間、ふわりと身体を抱き締められました。
思わず震える私に、アレクセイ様が言いました。

「ラウラ……こんなに傷付けてごめん」

アレクセイ様の声も震えています。

「もういいんです。でももう私に近づかないで下さい」

「無理だ……俺はラウラを愛している。手離すなんて出来ないんだ」

何も変わらないアレクセイ様の言葉に私は絶望して顔を上げました。

その瞬間目に飛び込んできたのは、とても傷付いたような辛そうなアレクセイ様の顔でした。
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