クールな公爵様のゆゆしき恋情
「それからも手紙は定期的に届いた。内容は更に酷いものになっていった。だいたいがラウラからの贈り物に紛れていたが、決定的だったのがラウラの社交界デビューの夜会の数日前に届いたものだ」

「……何が書かれていたのですか?」

「婚約を解消したい。王子殿下のエスコートは不要です。ラウラの筆跡でそう書かれていた」

「ま、まさか!」

そんな事はあり得ません。だって私は絶対にそんな手紙は書いていないのです。

「幼い頃から何年も手紙のやり取りをしていたんだ。ラウラの筆跡は見慣れている。見違える訳がない。だからラウラからの手紙だと疑わなかった」

「だから私のデビューの夜会に来て下さらなかったのですか?」

あの夜、アレクセイ様が迎えに来てくれないと知った私は、項垂れながらお父様に連れられ王宮の夜会に行きました。

通常、婚約者がいる令嬢のエスコートは、その相手が務めます。

アレクセイ様と私の婚約は周知の事でしたから、お父様と夜会に出席した私は、その夜好奇の視線に晒され、とても悲しい思いをしたのです。


「それがラウラの望みだと思っていたんだ」

「そんな……私はアレクセイ様がエスコートして下さる事を心から楽しみにしていたのに……誰がそんな酷い嫌がらせを?」

私の元に届いた手紙と同一人物の仕業なのでしょうか?

「それについては解決している」

「えっ? 犯人が分かったのですか?」

「ああ。それは後でゆっくり話すが、とにかく俺がラウラを避けていた理由は、リュシオンの事と手紙の事が主な原因だ。だが根本的な原因は俺が卑屈になって自信を持てなかった事だと思う。その証拠に手紙の事が解決した後もラウラに気持ちを伝える事すら出来なかったんだからな」
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