クールな公爵様のゆゆしき恋情
時間の流れの速さに驚いていると、アレクセイ様が立ち上がり、リュシオンに向かって歩いて行きました。

「アレクセイ様?」

私も慌てて立ち上がり後を追います。

アレクセイ様のリュシオンへの気持ちを知った今、この状況はあまりに不安です。

けれど、私の心配とはうらはらに、アレクセイ様はリュシオンに、とても穏やかな口調で声をかけました。

「リュシオン、知らせてくれて助かった。もう大丈夫だ」

「いえ、ラウラ姫の心の憂いが晴れた様で、安心致しました」

リュシオンは淡々と答えます。
一体何の事なのでしょうか?

アレクセイ様は私の疑問を察してくれたのか、答えをくれました。

「ラウラの様子がおかしい事。ここにいる事をリュシオンが知らせてくれたんだ」

「……え?」

どうしてリュシオンが?

「リュシオン、どうしてアレクセイ様に?」

「それがラウラ姫の望みだと思ったからです。ですが差し出がましい事を致しました。申し訳ありません」

私はアレクセイ様との事は、何も話していませんから、リュシオンの言葉に驚きました。
でも……思い出しました。リュシオンは今までだって、いつも私の悩みに直ぐに気付いて、手を貸してくれていたのです。

「……ありがとうリュシオン。アレクセイ様に知らせて貰って良かった。それにおばあ様のお話もネックレスの事も。わざと教えてくれたのですよね」

今回も、私がアレクセイ様と上手く話せる様に、手助けをしてくれたのだと思いました。リュシオンはそれは認めず曖昧に濁してしまいましたが。


「帰りは馬車を用意しております。こちらにおいでください」

リュシオンはアレクセイ様と私をお屋敷の方へと促します。けれどアレクセイ様は立ち止まったまま、リュシオンを見据えて言いました。

「今回の事は感謝している。知らせてくれなかったら、俺はラウラを失っていたかもしれない。間に合ったのはお前のおかげだ」

アレクセイ様が、リュシオンに頭を下げました。

驚く私の前で、アレクセイ様は更に驚く事を言ったのです。

「いろいろ有ったがこれからもラウラを助けてやって欲しい」

リュシオンは、驚愕の表情になり、それから穏やかに微笑み答えました。「もちろんです」と。
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