クールな公爵様のゆゆしき恋情

真実

湖へ続く道には、色とりどりの花が咲き乱れています。

緑の木々に囲まれた小さな湖、そこから続く花の道。

エステル曰く、アンテスの新しい名所であるこのお屋敷とも、あと一月でお別れです。

私が居なくなった後の管理はエステルの指揮のもと、お屋敷で働くトーマス達が引き続き行ってくれる事になりましたから安心できます。

最後の一月で、やり残しがないか確認をする為に花畑を歩き回っていると、遠くに金の煌めきが見えて来ました。

あれは……アレクセイ様?

思いがけない事に驚いていると、私を見つけたアレクセイ様が、真っ直ぐに駆け寄って来ました。

「ラウラ!」

有無を言わせずに抱き締められてしまいます。

閉じ込められた腕の中、必死に顔を上げてアレクセイ様に問いかけました。

「当分フェルザーの領地を離れられかったのではないのですか?」

アレクセイ様はとびきりの笑顔で、言いました。

「少し時間が空いたから、ラウラに会いたくて馬を飛ばして来た」

「少しって……では直ぐにお戻りになるのですか?」

「ああ、三日後には領内会議だ。残念ながら泊まってはいけないな」

「三日後?」

思わず高い声が出てしまいました。
だって、フェルザー領からアンテスまでは早馬でも三日はかかる距離なのです。

つまり、アレクセイ様は来た途端に帰らなくては、会議に間に合わなくなってしまうのです。

「いくらなんでも、無茶が過ぎませんか?」

「全然。あと一カ月ラウラと会えない方が無茶だろ?」

「だ、だからって、こんな思いつきで、突然来るなんて……」

アレクセイ様の行動力には呆れてしまいます。

「……ラウラは俺に会いたくなかったのか?」

少し、いじけた様なアレクセイ様の声。
私はクスリと笑いながら答えます。

「いえ、とても会いたかったです」

正直に言えば、私もとても嬉しいんです。

花壇の確認は明日に回して、今日はずっとアレクセイ様と過ごす事にします。

「アレクセイ様、会いたかったです。来てくれてありがとうございます」

アレクセイ様は、輝く様な笑顔を見せてくれました。
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