クールな公爵様のゆゆしき恋情

兄との再会

護衛騎士の皆さんのおかげで旅は安全に順調に進みました。

王都を経ってから七日目に、ついにアンテス領の最南の町、エンテの街が近付いてきました。

エンテの街は王都への街道沿いと重要な場所に有る為、アンテス領の中でも城下町アトレゼの次に大きく栄えている所です。

街道から繋がる先には大きな門が有り兵士が守っています。町全体を壁で囲っているので、中に入るには東西南北の4カ所に有るこの様な門を通るしか有りません。

「ここがエンテの街?」

エステルが馬車の窓に張り付くようにして外を眺めています。

王女としてはどうかと思う態度ですが、楽しそうなところに水を差すのも悪いと思い、黙っておきます。

私も反対側の窓から何の気なしに外の様子を伺い、その瞬間思わず変な声を上げそうになりました。慌てて窓から目を逸らします。

まさか……ですよね。

自分の見た光景が信じられず私はもう一度外を眺め、続いてがっくりと項垂れました。

残念ながら見間違いでは有りませんでした。


エンテの街の門を守る屈強な兵士達は実に見事な一糸乱れぬ整列をしています。その中心には、本来ならここには居ないはずの、腕を組んだ大柄な銀髪の男性の姿が見えました。
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