クールな公爵様のゆゆしき恋情
これはまずい。
辺境伯は誤解して完全に怒っている。

「話は終りという事で、よろしいでしょうか?」

寒気がする程の冷ややかさで、辺境伯が言う。
このままでは追い出されてしまいそうだ。
今の辺境伯は王族相手でも容赦が無さそうな気迫を感じる。

「ま、待ってくれ。デリアの事は誤解なんだ。あれは理由が有っての事だ」

「理由とは?」

真底面倒そうに辺境伯が言う。

……これだけは言いたく無かったが仕方ない。
もう後が無い。俺は断腸の思いでプライドを捨てて一気に言った。

「ラウラに当て付けたんだ! あいつがあまりに俺に無関心だから少しでも気にして欲しかった。それに都の女の間では好きな男の色を身に付けてるって話なのにあいつは俺の色じゃ無い赤い首飾りをしていたから、ついイライラしてしまったんだ!」

「……は?」

俺の告白に衝撃を受けたのか、辺境伯はそれまでの仮面を被った様な無表情を崩して、ポカンと口を開けた。

「……まさか、今までラウラに辛く当たっていたのも?」

信じられないといった様子で辺境伯が呟く。

俺は頷いて、ハッキリと言った。

「俺がラウラを嫌った事は一度も無い。様々な、事情で誤解していた事も有るが、それも解決している」

「……様々な事情とは?」

追求されて俺は言葉に詰まった。

俺とラウラの関係が拗れてしまったのは、第一王子である兄のくだらない妨害工作のせいだ。
あっさり騙されてた俺もどうかと思うが、ラウラの事になると感情的になって、判断力が鈍ってしまう。

これ以上言えば王家の恥を晒す事になる。
だが、辺境伯は、曖昧な言葉では納得しないらしい。

言葉を選びながら、俺は辺境伯に今迄の事を説明した。

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