クールな公爵様のゆゆしき恋情
面会は国王の私室で行われた。
俺の用件が何なのか察している様で、あらかじめ人払がされていた。

「ラウラ姫には許してもらえたのか?」

座り心地の良いソファーに俺が腰掛けるのと同時に、国王が言った。

「……ラウラとは会話が出来ていません。彼女は今、アンテス領に居ます」

「アンテス領に? ……そうか、本当にお前に愛想を尽かしたんだな」

そんな事あるか! と強気で言えないのが今の俺の立場だ。
苛立ちを抑えて努めて冷静に答える。

「エステルに付き添ったのでしょう。あの二人は親友と言っても良い程親しいですから」

「そうか。アンテスに嫁ぐエステルには心強い事だな」

国王は嬉しそうに目を細める。娘が可愛いのは分かったが、今は俺の話を聞いてくれ。
国王の意識をこちらに向けるべく、俺は声を大きくして言った。

「陛下にお願いがあります」

「……アレクセイがお願い?」

国王は警戒した様な目で俺を見る。

以前、エステルに『お父様お願い。私、どうしてもアンテスに行きたいの!』なんてねだられていた時のニヤけた顔とは大違いだ。

扱いの違いに若干の不満を覚えつつ、俺は国王に要求を突き付けた。

「フェルザー領の当主の位を頂きたい」

俺の発言に、国王は呆気に取られた顔をした。

「……お前は何を言ってるんだ? 突拍子も無い事をいいだして、何を考えているんだ」

「フェルザー領は長く当主不在が続いていました。領民も新領主を望んでいると聞きます。俺なら身分的に公爵位を賜る事に問題は無いはずです。それに俺が臣籍に下る事で、余計な画策をする人間が減るはずです。王家にとっても歓迎すべき事と思いますが」

何日も前から考えていた“表向きの理由”をスラスラと述べる。
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