クールな公爵様のゆゆしき恋情
それからは必死で働いた。
元々工事が進んでいた事もあり、半年を待たずにある程度の結果が出せそうだ。

必要な時だけ城に戻り、後は治水工事現場で過ごすと言う生活を続けている内に、レオンとエステルが王都に戻って来ていたようだ。




その日も現場に出て作業を監督していた俺の前に、二人は突然現れた。

「アレクお兄様アンテスより戻りました!」

明るい声は母親違いの妹のエステル。

「アレク、久しぶりだな」

エステルの隣をしっかりキープしている大男は、ラウラの兄レオン。

二人はアンテスでの観光を満喫し、帰りの旅もずっと一緒だったのだろう。
異様に仲が良く見える。
エステルは躊躇いなくレオンの腕に、自分の腕を絡ませているし。

醒めた目で二人を眺めながら、ふと想像してしまった。ラウラがあんな事をしてくれたら……。

『アレクセイ様、好き』

なんて言いながら、あの華奢な身体を摺り寄せて来たら……駄目だ。想像しただけで頭がクラクラする。

「アレク、お前……顔が怖いぞ」

ついニヤけてしまったのだろうか。
レオンが不気味なものを見る目を向けて来る。

「……二人共どうしたんだ?」

気を取り直して俺は言った。

わざわざ現場まで来るなんて、急用か?
特にここは王女のエステルが来るような所じゃない。

動きやすそうな衣装を着ていても、存在自体に違和感がある。

「アレクが相談が有るから来てくれって言うから、駆け付けたんだが?」

確かに手紙にはそう書いたが、二人で散々観光を楽しんだ後に駆けつけたと言われても説得力がないな。

でもまあいい。
ラウラの様子は是非聞きたいから、二人の訪問は都合がいい。

二人を俺の部屋へ通してから、きりの良い所まで作業を進める。

何もない部屋で待たせているから暇を持て余しているんじゃないかと心配したが、全くの杞憂だった。

二人は人の部屋でもおかまいなしに、それは楽しそうにくっついていたんだからな。
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