クールな公爵様のゆゆしき恋情
「アレクお兄様はどうしてラウラの様子を知りたいのですか? 」

「それは……」

俺は言葉を濁した。
ラウラを愛していて、迎えに行く気満々だからだとは、妹には言い辛い。

だが、我が妹は容赦が無かった。

「聞きましたよ。ブロスト家のデリアに入れ上げているそうですね。ラウラの目の前でデリアを選んだとか」

「いや、それは!」

「しかも他の令嬢達が居る前での事だとか。聞いた時信じられませんでしたわ。辺境伯令嬢のラウラにそんな屈辱を与えるなんて。許せませんわ!」

辺境伯が怒っていたのは分かるが、なぜ妹にここまで怒られなくてはいけないんだ?

「俺も信じられなかったぜ。アレクはラウラ一筋だと思ってたからな」

「……なんで二人が知っているんだ? あの夜会には出ていなかっただろう?」

まさか、辺境伯に聞いたのか?

「本人に聞きましたから」

「ラウラに? ……何て言ってたんだ?」

「アレクお兄様との婚約が嫌だから解消した。この先は身分が無くてもお互いを大切に思える相手と結婚したいと」

エステルの言葉は威力抜群で、俺は胸を貫かれた様な痛みに呻いた。

「まさか……ラウラは、リュシオンと結婚するつもりなのか?」

身分は高いけど嫌いな俺との結婚を破棄したのは、身分は低くとも愛するリュシオンと結婚する為なのか?

「アレクお兄様、何を馬鹿な事言ってるのですか?」

妹の呆れた声も耳に入らない。

駄目だ! 半年も待てない!
今すぐアンテスへ行かなくては!

「アレク落ち着け」

血相を変えて立ち上がろうとした俺を、レオンか止めた。だがその顔はにやけている。

「アレク、俺はラウラから話を聞いて、お前が何を考えているのか疑問だったが、今理解したよ。お前がただの馬鹿だったって事を……容姿端麗、文武両道、都の女達の憧れの的の王子殿下が、こんな……」

そこまで言うとレオンは、盛大に吹き出した。
それからしつこく笑い続ける。

「アレク……あんまり笑わせるなよ、 あー腹筋痛い」
「……」
「レオン? どうしたの?」

腹を押さえて笑うレオンと、わなわな震える俺を交互に見ながら、エステルが首を傾げる。
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