クールな公爵様のゆゆしき恋情
「あら?」

エステルも気付いた様で驚いた声を上げました。

「レオン? ねえラウラ、あそこに居るのレオンよね?」

エステルはそれは嬉しそうに顔を輝かせていいます。

私は多分正反対の渋い顔をしていると思います。

レオンハルトお兄様は、アンテスのお城を離れられないからエステルの到着は城で待つとおっしゃっていました。でもどうやら私は騙されていたようですね。

お兄様には昔からこういった所がありました。想定外の行動をして相手を驚かしたがるのです。相手が思いがけない事に感動して喜ぶ姿を見る事が好きらしく、こんな風に何かと驚かせる事ばかりするんです。

今回も成功したようでエステルは感動に浸っています。お兄様に予定より早く会える事がとても嬉しいようです。
私は“またか”と呆れてしまうばかりですが。


「エステル!」
「レオン! 迎えに来てくれたの?」

エステルが馬車から降りた途端、駆け寄って来ていたお兄様がエステルを熱烈に抱きしめました。

続いて馬車から降りようとしていた私は、動きを止めて固まったまま二人の抱擁に見入ってしまいました。

昼から、しかも大勢の兵士達がいる前で大胆すぎると思います。

私の方が居たたまれない気分になります。もう一度言いますが、エステルって王女の自覚が無いですよね。

それにお兄様も。今年21歳になったお兄様はお父様の仕事の半分を代行しているそうです。

でも、エステルの為に仕事を放ってここまで来てしまうのですから、次期辺境伯としての自覚はあまり無さそうな気がします。
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