クールな公爵様のゆゆしき恋情
目の前で笑い転げる銀髪の大男に、俺は剣を抜いて突きつけた。

「お兄様⁈」

エステルが顔色を変え、高い声を上げる。

「エステル下がっていろ。こいつは一度痛い目を見るべきだ」
「痛い目って、お兄様落ち着いて!」
「大丈夫だ。こいつは剣で切られるくらい何でもない」

これだけデカくて図太いんだからな!
相変わらず腹を抑えているレオンは、全く焦る様子も無く言った。

「そんな事していいのか? 俺がアレクにやられたって知ったらラウラは怒るだろうな。あいつは兄思いだからな。ますますアレクを嫌いになるだろうな」

「うっ!」

そ、それはまずい。

『アレクセイ様なんて大嫌い!』

なんて言われたら立ち直れる気がしない。

くそ! 何でこんな性格の悪い男がラウラの兄なんだ!

怒りが冷めないまま、それでも俺はしぶしぶ剣を鞘に戻す。

「そんなに怒るなよ。ラウラとの事協力するから」

「……本当だろうな?」

疑いの目でレオンを見る。
ラウラに近い立場のレオンの協力は、今後必須になる。

「俺の協力は必須だと思うぞ? 母上がラウラの相手を血眼で探している。妨害できるのは俺くらいだと思うが」

「辺境伯夫人が⁇」

「ああ。18歳にもなった娘が婚約者も居ない現状をそれは嘆いていてな」

そうだ。うっかりしていたが、ラウラの母親である辺境伯夫人が、娘の婚約解消について黙っている訳がない。

「……レオン、半年でいい。何としても妨害してくれ」

「ああ。任せろよ。多少汚い手を使ってもラウラが他の男と結婚するのは阻止してやるよ」

何をするつもりなのか、ニヤリと悪そうに笑う姿は、とてもラウラと血が繋がっているとは思えない。

今は、心強い限りだが。


レオンに約束を取り付け安心した直後、エステルの高い声が割り込んできた。

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