クールな公爵様のゆゆしき恋情
再会の感動に浸っていた二人はようやく落ち着いた様で離れてくれました。私はホッとして馬車から降りました。
するとようやく私に気付いたお兄様が言いました。
「ラウラ、久しぶりだな。急に帰って来るなんてどうしたんだよ?」
半年ぶりに会った妹に対しては大した感動は無いようです。極普通に話しかけられました。
「お久しぶりです、お兄様。後日お父様から連絡が有ると思いますけど、私はアンテスに正式に帰る事になりました。もう王都へは戻りません」
「は?」
お兄様は心底驚いた様に大口を開けました。
「何で? アレクは承知したのか? あいつは……いや、それより先にエステルを休ませないとな」
そう言ってお兄様は話を止めて、エステルと私にエンテの街の中に入る様に促しました。
三人で街の門を通り抜けます。お兄様のおかげで手続きも必要無く直ぐに街に入れました。
エンテの街は石畳の大通りに、2階建ての家が所狭しと立ち並ぶ活気に溢れた街です。
家の一階は商店になっていて、珍しい織物や、新鮮な食べ物。女の子が好む様な可愛いらしい置物など、様々な商品が行きかう人々の目を楽しませてくれます。
ベルハイムの王都の様な優美な華やかさは無いけれど、生き生きとしていて、私はこの光景をとても気にいってます。
エステルも同じ気持ちの様で、楽しそうに目を輝かせて辺りを観察中です。
お兄様は私達を街の中心の大通沿いに有る大きな宿屋に連れて行きました。