クールな公爵様のゆゆしき恋情

帰還、アンテス城



エンテの街で一晩休んでから旅の再開です。

お兄様の先導で馬車は快調に走り続けます。

王都を出て9日目の昼過ぎには、小高い山の上に建つ、アンテスのお城が見えて来ました。

「エステル、アンテスのお城が見えて来ましたよ」

私が声をかけるよりも早く、窓の外の景色に釘付けだったエステルは、子供の様に瞳を輝かせて言いました。

「あんな山の上にお城が有るなんて凄いわ! 周りの景色も……王都とは何かもが違うのね」

「そうですね……」

エステルが言う通り、王都とアンテスは本当に違っています。

平坦な土地に人が作った城壁で守られた王都は、整然とした町並みがとても綺麗で洗練されています。

白亜の王宮は優美で太陽の光を受けて美しく輝きます。

王都の近くには大きな河が有りますが、水害に備えて人の手が加えられています。

遥か遠くに連なる山々は見えますけど、王都の大広場に有る巨大な時計台の方が目を引きます。


アンテス城は小高い山の上に建つ、灰色の石造りのお城です。

優美さは有りませんが、とても堅牢な造りでお城からは城下町を見渡せます。

城下町だけではありません。遥か遠くの北の海も、南の王都へ向かう広い街道も、西方に見える頂上に雪を被った霊峰も、東にある隣国との国境にある砦も……お城からは、いろいろなものを見る事が出来ます。

馬車はお城に向けて緩やかな坂を上って行きます。この道は馬車用に作られた広く整備された道で、山を登っているのになだらかな傾斜で、ガタガタ揺れる事も無いから安心していられます。
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