クールな公爵様のゆゆしき恋情
私達の婚約解消については、自ら語りたく有りません。思い出したくないですし、面白半分に噂をされるのも嫌な気持ちになりますから。

でもリュシオンは別です。信用出来ます。私は躊躇い無く言いました。

「第二王子殿下との婚約が解消になったのです。それで王都を出てアンテスへ戻って来ました」

リュシオンにとっては思いがけない事だったのか、いつも冷静な彼が酷く驚いた顔をしていました。

「なぜ、そんな事に……」

リュシオンが呆然と呟きました。彼が無防備に独り言を言うのも珍しいです。

「私から言い出した事です。家の事情も婚約解消が許される様になりましたので、私にとってもアレクセイ様にとってもその方が良いと思ったのです……リュシオン、この事はあまり追及しないで下さいね」

アレクセイ様絡みの話は出来ればしたくありません。そんな気持ちが伝わったのかは分かりませんが、リュシオンは私の望み通りにしてくれました。

昔からお父様の護衛騎士として私達家族の身近に居てくれたリュシオンは、私の事を良く分かってくれています。考えている事もだいたい分かるようです。


お母様の部屋の前まで送ってくれたリュシオンは、自分は中には入らずに職務に戻って行きました。聞けば他の騎士達と訓練中だった所を私の出迎えにわざわざ抜け出して来てくれたそうなんです。

「リュシオン、ありがとう」

温かい気持ちになりながらリュシオンに手を振って見送り、機嫌良く部屋に入りました。

その後、お母様の怒りに満ちた執拗な尋問が待っているとも知らずに。
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