クールな公爵様のゆゆしき恋情


その夜、アンテス城ではエステルの歓迎の宴が開かれました。

他家のお客様は招かずに、参加しているのは私達家族と城詰めの上級騎士の皆さんと、ごく内輪での祝いの席です。

その方が気楽で私は楽しめます。エステルも同じ気持ちの様でご機嫌です。深い赤のワインを何度も口に運んでいます。お兄様とお母様との会話も楽しく盛り上がっているようでした。

エステルとお母様は初対面でしたが、直ぐに意気投合したようです。七歳年下の妹グレーテも気さくで明るいエステルを大好きになったようです。

会話がひと段落した頃、エステルの頬は真っ赤になっていました。

随分とワインを飲んだようです、王都と違ってここには作法が……などと言って注意してくる人がいませんので、気が緩んでしまったのでしょう。

エステルは熱を持って潤んだ瞳で私を見つめて言いました。

「ねえラウラ」

「どうしました?」

「王都を出た時から思ってたんだけど、そのネックレスはどうしたの?」

エステルの視線は私のルビーのネックレスに向けられています。

そう言えばアレクセイ様にも聞かれたな……と思いながら私は答えました。

「大好きな人に頂いたのです。お守りみたいなものですよ」

とても大切なものだから大事に仕舞っていたのですが、婚約解消の日に気持ちがぶれない様にと願いをかけて、初めて身に付けました。

それから毎日付けて、前向きになれる様にとお願いしています。
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