クールな公爵様のゆゆしき恋情
「先日、フェルザー領の新しい当主が決定致しました」
「フェルザー領の? ……それは良い知らせですね」
フェルザー領は、アンテス領の隣に位置する広い平野の領地です。
有事の時にはアンテスと協力して隣国リドガルドとの戦いに挑む事になります。また、王宮から見ると敵国の王都侵攻を阻む、アンテスに次ぐ第二の砦とも言えますから、アンテス家にとっても王家にとっても重要な領地と言えるのです。
ですが、11年前の隣国リドガルドとの戦の時に受けた傷が元で、フェルザー家の当主は亡くなってしまいました。
その直後不運な事に跡継ぎのご子息が病に倒れてしまい、元々血縁者が少なかった事も有ってフェルザー家の血筋は途絶えてしまったのです。
重要な領地に当主不在は問題の為、直ぐにフェルザー家の後継者が必要になりましたが、なかなか適任者が見つかりませんでした。
フェルザー領の当主は公爵の位になるからです。
それ程の身分に就ける者が居なかった為、今は王家直轄領地となり、代官が来て領地の運営を行っているのですが、代官では心許ない事も有り、皆が新しい領主を待ちわびていました。
ようやく相応しい人が見つかったのですね。
「お父様とお兄様もホッとしているでしょう?」
「はい、特にレオンハルト様の喜び様は目を瞠るものがあります」
「そんなに喜んでいるのですか?」
リュシオンは「はい」と生真面目に頷いたけれど、私はエステルとの結婚で浮かれて、はしゃいでいるだけな気がします。