クールな公爵様のゆゆしき恋情
「ど、どうして私が?」

「アンテス家の令嬢とフェルザー公爵の婚姻は、政略的に重要かと思います」

思わず呟いた独り言にリュシオンが律儀に答えてくれました。

「政略的……そうかもしれませんが……」

でも私は今はまだ結婚なんて考えられません。心の準備がまるで出来ていないのです。

「支度も有るだろうから、しばらく城に戻る様にとのレオンハルト様のご命令です」

「支度って……結婚をする為の支度ですか?」

どうしても無理だと思ってしまいます。

青ざめる私に、リュシオンが心配そうに言いました。

「ラウラ姫、この縁談は気が進まないのですか?」

相手がリュシオンで安心している為か、私は取り繕う事も出来ずに頷いてしまいました。

「私は結婚なんて考えられません」

「第二王子殿下との婚約の時はその様な事はおっしゃっていませんでしたね」

「それは……アレクセイ様となら結婚したいと思ったからです。上手く行きませんでしたけど、でも今の私にはまだ他の人に嫁ぐなんて考えられないのです」

「……そうですか。申し訳有りませんでした。立入った事を伺いました」

動揺する私をリュシオンは悲しそうに見つめながら言いました。

きっと私の未来が予想出来るのでしょう。

いくら嫌だと言っても、お父様が必要だと決めたのなら最後には逆らえなくなります。貴族の娘に生まれた以上、結婚に自分の気持ちを通す事は難しいのです。

この話を無かった事にするには、お父様がフェルザー公爵との縁は不要だと判断してお断りするしか有りません。

でも……フェルザー家の重要性を考えるとそれは有り得ないと思います。

抵抗しても私はフェルザー公爵へ嫁ぐ事になり、このお屋敷からも離れなくてはならなくなります。

ようやく生活が軌道に乗り始めていたのに。

絶望が襲って来て、私はがくりと項垂れました。
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