クールな公爵様のゆゆしき恋情
こんな光景は何度も見ました。
アレクセイ様は私には冷たいけれど、デリア様を初めとした他の令嬢達には優しいのです。

その事実は私の心を苦しめました。
私にも優しくして欲しい。心を開いて欲しい……だって私はアレクセイ様の婚約者なのですから。


私には見向きもしないで、他の令嬢とばかり仲良くされては悲しいです。泣かずにはいられません。嫉妬で眠れない夜も有りました。

愛されたくてたくさん努力をしたつもりです。
ですが無駄でした。アレクセイ様は何をしても私を受け入れてはくれなかったのです。


「その首飾りはデリアが着けた方が似合うな。地味なラウラには華やかな赤は似合わない」

ずきりと胸が痛みます。

私が地味なのは本当の事です。
銀髪に菫色の瞳は、アレクセイ様の黄金の髪やデリア様の赤い髪と比べると目立ちませんから。
それでも好きな人に言われると傷付いてしまうのです。



アレクセイ様はどうして私を傷つける事ばかり言うのか不思議でした。

でもある日気付いたのです。
本当は私との婚約を破棄したいのに、それが叶わないからアレクセイ様は私が憎いのだろうと。


私達の婚約は王家が決めた政略的なものです。

私のお父様のアンテス辺境伯の領土は、隣国との境に位置していていざという時国を守る要になります。
有事の時に備え強い騎士達を多数抱えいる為、他の貴族よりもずっと強い、小国の王家並みの力を持つ家なのです。

ベルムバッハ王家はアンテス家との絆を深める為に、アレクセイ様と私の結婚を決めました。

その様な事情からアレクセイ様がどれ程嫌でも、私との婚約は破棄できなかったのです。



でも――それは今日で終ります。
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